まなびの計画を立てる(前編)
生涯学習の計画・実施の際には、まず看護師として活躍するためにどのような資質・ 能力が求められているかを確認し、その内容を意識したうえで、どのような内容を学ぶかを考えることが重要です。また、学ぶ方法も様々なので、学ぶ内容や自分の状況に適した方法を選択します。それではまず、看護師として活躍するために必要な能力について確認してみましょう。
看護師として活躍するために必要な能力とまなびの内容を確認する
Ⅰ.看護師として活躍するために必要な能力の全体像を確認する
- 看護師として活躍するためには、様々な能力が必要です。
- 看護職の生涯学習ガイドラインでは、「社会人に求められる能力」「看護職に求められる能力」「所属する組織で求められる能力」と示しています。
看護職の生涯学習ガイドライン
「5-2 ②看護職に求められる能力を踏まえた生涯学習の検討」より抜粋
本ガイドラインでは、看護職として活躍するために必要な能力を 3 種類に大別して考えます。 「社会人に求められる能力」「看護職に求められる能力」「所属する組織で求められる能力」です。 それぞれの能力には重複する部分もありますが、どんな能力を意識する必要があるかを明確にするために、以下のように整理します。
- 社会人に求められる能力 社会人として自立し、多くの人と関わり働くために求められる基盤となる能力であり、看護職であるか否かに関わらず求められる能力。社会人基礎力※ 1 や、自律的に自らのキャリアを描き実現のために行動していくこと等を含む。
- 看護職に求められる能力 看護に専門性を持つ職種として活躍し、看護の業務に従事するために求められる能力。「看護師」「助産師」「保健師」「准看護師」のそれぞれの職種に求められる能力に加え、活躍している看護の領域等に応じて必要な能力や、看護管理者等の特定の役割を果たすために必要な能力を含む。 それぞれの職種に求められる能力については、看護師は「看護実践能力※ 2」として、また、助産師は「助産実践能力※ 3」として公表されている。
- 所属する組織で求められる能力 看護職を雇用している組織が、理念や機能に応じて、雇用している職員に求める能力。
看護職としての生涯学習の計画・実施においては、特に「看護職に求められる能力」について、日々の看護実践や様々な機会を通じて学習し続ける必要があります。
※ 1…経済産業省(2018)、人生 100 年時代の社会人基礎力
- 「看護職に求められる能力」は、看護職の生涯学習ガイドラインがすべての看護職を対象としているため全体的な内容を示していますが、ここでは、看護師として活動する場合に必要な能力について、具体的に確認していきます。 「看護職に求められる能力」は、働く場や領域、担っている役割に関わらず、 すべての看護師に共通して必要な能力「看護実践能力」と、働いている領域や担っている役割に伴って求められる能力が含まれます。
- それでは、すべての看護師に共通して必要な能力である「看護実践能力」の内容を確認しましょう(表1)。
- 日本看護協会では、看護師が看護実践を行うために必要な能力を「看護実践能力」とし、「専門的・倫理的・法的な実践能力」「臨床実践能力」「リーダーシップとマネジメント能力」「専門性の開発能力」の4つの能力で構成することを示しています。
- この看護実践能力は、看護職の行動指針である「看護職の倫理綱領」と、国際看護師協会の作成した枠組み※1を参照し、策定しました。従来「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」で示していた「看護の核となる実践能力」を拡張し、 看護師に求められる能力の全体像として新たに策定しました。
- 生涯学習を計画していくときには、この能力の構造を理解して、これからどのような能力を開発・維持・向上していくかを考えていくことが大切になります。また、 様々な学習を行うときには、その学習で得られる学びはどのような能力とつながるものなのかを意識するようにしましょう。
- ※1…国際看護師協会(2008年)、Nursing Care Continuum Framework and Competencies:看護ケアの連続した枠組みとコンピテンシー
| 能力 | 能力の構成要素 | 能力および構成要素の定義 |
|---|---|---|
専門的・倫理的・法的な実践能力 |
自らの判断や行動に責任を持ち、倫理的・法的規範に基づき看護を実践する能力。 | |
| アカウンタビリティ※2(責務に基づく実践) | 看護師としての責務と職業倫理に基づき、自らの判断や行為、行ったことの結果に責任を負い、自身の役割や能力に応じた看護実践を行う。 | |
| 倫理的実践 | 看護師として倫理的に意思決定、行動し、人々の生命や権利、多様性、プライバシー等を尊重し看護実践を行う。 | |
| 法的実践 | 看護師として法令遵守が定められている行動は何かを認識し、法令やガイドライン、所属組織等の規範に基づき看護実践を行う。 | |
臨床実践能力 |
個別性に応じた適切な看護を実践し、状況に応じて判断し行動する能力。 | |
| ニーズをとらえる力 | 体系的な情報収集とアセスメント(整理・分析・解釈・統合)を行い、看護問題の優先順位を判断し、記録共有する。 | |
| ケアする力 | ケアの受け手とのパートナーシップ※3 のもと、それぞれの状況に合わせた看護計画を立案・実施・評価し、実施した看護への対応を行う。 | |
| 意思決定を支える力 | ケアの受け手や関係者との信頼関係と対話、正確かつ一貫した情報提供のもと、ケアの受け手がその人らしく生きるための意思決定を支援する。 | |
| 協働する力 | ケアの受け手や保健・医療・福祉および生活に関わる職種・組織と相互理解し、知識・技術を活かし合いながら、情報共有や相談・提案等の連携を図り看護を実践する。 | |
リーダーシップとマネジメント能力 |
組織の一員として看護・医療の提供を効率的・効果的に行うために、状況や役割に応じたリーダーシップを発揮しマネジメントを行う能力。 | |
| 業務の委譲 / 移譲と管理監督 | 法的権限や役割等に応じて、看護チーム(看護師・准看護師・看護補助者)における業務委譲および他職種への業務移譲と、業務遂行の管理・監督を適切に行う。 | |
| 安全な環境の整備 | 安全な看護・医療提供環境の維持・実現のため、リスクの評価や適切なマネジメント方法の検討を行い、医療安全、感染予防、災害対応等を行う。 | |
| 組織の一員としての役割発揮 | 組織(チーム等)の中で、業務改善やチームワーク向上のために行動し、担う業務の優先度を考え、時間等の適切な管理のもと実施する。 | |
専門性の開発能力 |
看護師としての資質・能力を向上し、適切かつ質の高い看護実践を通じて、看護の価値を人々や社会に提供し貢献する能力。 | |
| 看護の専門性の強化と社会貢献 | 看護の専門職として、制度・政策の提言や看護学の発展等の看護の効率・効果を高める活動に、専門組織を通じて関わり社会に貢献する。 | |
| 看護実践の質の改善 | 看護の成果を可視化、分析することで、自身や組織の看護の改善プロセスに関わるとともに、同僚や学生の学習支援・指導に関わる。 | |
| 生涯学習 | 自身の能力の開発・維持・向上に責任を持ち、生涯にわたり自己研鑽を行い、他の看護師や保健・医療・福祉に関わる多様な人々と共に学び合う。 | |
| 自身のウェルビーイングの向上 | 適切で質の高い看護を実践するため、看護師自身のウェルビーイング※4 を向上する。 | |
- ※2…英語表現での「Accountability(アカウンタビリティ)」のニュアンスに含まれる「生じた結果とその理由への責任」という広い意味を示すために、日本語訳として多く用いられる「説明責任」ではなく「アカウンタビリティ(責務に基づく実践)」と表記した。
- ※3…「看護職の倫理綱領」では、保健・医療・福祉におけるパートナーシップは、看護職と対象となる人々が、 よりよい健康や生活の実現に向かって対等な立場で協力し合う関係のことを示している。
- ※4…「看護職の倫理綱領」においては、1948年に世界保健機関(WHO)が公表した「世界保健機関憲章」 の記述を参考に、ウェルビーイングを身体的、精神的、社会的に良好な状態であることと意訳し、使用している。
