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モデル事業活動報告:兵庫県看護協会
2月13日金曜日
11:15〜17:00 症状の進行していく療養者および家族への支援
講師:公立八鹿病院神経内科部長 近藤晴彦、音楽療法士 木村百合香
症状の進行していく療養者やその家族に対する訪問看護の支援について、神経難病と音楽療法の2つの視点からお話しいただきました。
 
【講義の概要(神経難病について)】
1.神経難病の理解
●神経症状・・・麻痺、頭痛、めまい、しびれ、ふるえ、ふらつき など
●神経難病・・・変性・遺伝性疾患、免疫疾患など
●神経難病の特質
神経難病患者は次のような特質から、多くが身体障害者でもある。
 ・運動障害をきたすことが多い
 ・移動、日常生活動作に介助を要する
 ・症状が難治性、進行性の疾患が多い など
2.神経難病の治療の現状
●有効な治療法がある疾患・・・重症筋無力症、パーキンソン病
●新しい治療法が開発されつつある疾患・・・多発硬化症に対する免疫抑制剤など
●確実な治療法がない疾患・・・運動訓練である程度機能維持が可能なもの(例・脊髄小脳変性症)
  進行が急速なもの(例・ALS)
3.高齢者と神経難病患者への対応の共通点
高齢者と神経難病患者への対応には、機能が徐々に低下したり回復の見込みがない状況の人に対し、どのように対応していくかという点において共通点がある。
●機能低下を進めないような努力
●残された機能を最大限に活用する努力(例・福祉機器の使用、住宅改造 など)
●その状況の中でいきあに生きがいを感じ、見いだしていくか
 
  4.ALS患者の在宅人工呼吸療法とQOL
 
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、進行が速いこと、四肢麻痺になっても意識や知能が保たれていることなどから患者への対応が困難であり、在宅ケア方法の確立が重要な課題である。1990年の診療報酬に在宅人工呼吸指導料が新設されたのを機に在宅を希望する患者が増加傾向であるが、それが可能かどうかは家族の介護力と支援体制の有無によるところが大きい。また、呼吸器装着後のケア体制の有無が、装着をするか否かの選択(=生死の選択)に影響を与えているという現状もあり、個人の意思で選択ができるような環境の整備が必要である。
 
  【講義の概要(音楽療法について)】
 
  1.音楽療法とは
 
音楽の持つ生理的、心理的、社会的働きを用いて、心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向け、音楽を意図的・計画的に使用すること(日本音楽療法学会の定義より)
 
  2.医療現場での関わり
 
医療現場における音楽療法は、症状の改善、長期入院生活に快的刺激を与える、痛みや不安の軽減、リハビリの一環としてなどの効果が期待されている。
 
  3.音楽療法のニーズ
 
音楽療法のニーズは、身体的なニーズ、認識的なニーズ、コミュニケーション・社会性のニーズ、精神的・心理的なニーズの4つに分類される。
 
  4.音楽療法における基本的体験
 
●受動的音楽療法・・・音楽鑑賞(すべての障害のタイプの対象者に応用可能)
●能動的音楽療法・・・歌唱、楽器演奏、動き など
 
  5.音楽の使い方
 
患者に対し音楽で寄り添う、回想による人生の整理(スピリチュアル・ケア)等に使用する。演奏や選び方は患者の好みに合わせることや、音楽を受け入れない患者に対しては静寂も音楽と捉え、あくまでも意思を尊重することが重要である。
 
  6.NBM(Narrative Based Medicine)と音楽療法
 
人間はそれぞれ自分の「物語」を生きており「病気」もまたその物語の一部であるという認識に立ち、治療を受ける側が自ら語る物語(ナラティブ)を重視する。患者が自然に語るのを待ち、「未だ言葉として語られない、あるいは語られるのに期が熟していない物語」を尊重する。
 
  7.ALS患者の音楽療法の目的
 
ALS患者に対する音楽療法は、不安や生理的刺激を減ずる苦痛緩和とカタルシスやノンヴァーヴァル(非言語)コミュニケーションといった精神的刺激を目的としている。
 
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