訪問看護ステーション・看多機(看護小規模多機能型居宅介護)事業所での仕事について、実際に働いている方の体験談をもとにご紹介します。
あなたの経験とスキルを生かして、地域の在宅療養者を支える仕事をしませんか?
今、訪問看護を必要としている人が増え、団塊の世代が後期高齢者となる2025年には訪問看護師が約12万人必要だといわれています。
訪問看護は、自宅などで療養する方を訪問し、主治医の訪問看護指示書のもと看護を提供するサービスです。利用者は、医療的ケアが必要な乳幼児から要介護認定を受けている高齢者、精神障害のある方などさまざまで、医療保険・介護保険制度を利用しています。
病院での看護と比べ利用者・家族にじっくりと関わり、病気を抱えるご本人と、ご家族を支えることができるのは、訪問看護ならでは。生活の中の喜びを利用者と共に感じたり、多様な背景をもつ経験豊かな同僚たちと働く楽しさもあります。
初めての訪問看護。週3日勤務で復職
静岡県 亀井 由紀子 さん
仕事で父の最期を十分看ることができなかった後悔があり、母の介護のために33 年務めた総合病院を退職しました。4 年が経つ頃、母の病状も落ち着いてきたので、気になっていたナースセンターの再就業研修を受けました。復職された方がご自分の体験を語ってくださったのですが、とても生き生きとされていて、自分も働きたいと思うようになりました。
ただ、母のデイサービスの送迎や介護を考えると、週3 日のパート勤務で、10 時~14 時の4 時間が、無理なく働けるラインでした。県ナースセンターに何度も通い相談しました。紹介されたのが今の勤務先ステーションでした。面接に行った際、所長に訪問看護の経験がないことや時間などの事情を相談すると「大丈夫よ」と背中を押してくれ、復職しました。
事業所からの説明のほか、介護保険制度や訪問看護に関する書籍などを読み勉強しました。最初は同行訪問で軽症の方を引継ぎ、2 カ月くらいで単独訪問となりました。復職して約1 年経った今はパーキンソン病や糖尿病、認知症、がん末期の方などを担当したり、休みのスタッフのリリーフもしています。
訪問看護は病院とは違い、訪問時間をめいっぱい、その方だけのために使うことができます。じっくり向き合って話を聞くことができ、自分が提供した看護の成果を見ることができるので、やりがいがあります。その方の最期にも関われる、尊い仕事だと思います。
■亀井さんの1週間のスケジュール
地元で起業して訪問看護を実践
鹿児島県 岩切 里実 さん
出産や進学などで離職していましたが、誘いを受け病院に復職しました。その後、地域連携室に配属されたのをきっかけに訪問看護に興味を持ち、鹿児島県看護協会の訪問看護研修を受講しました。担当していた人工透析の患者さんが、自宅での服薬がうまくいかないことがあり、以前から訪問看護の必要性を感じていましたが、勤務していた病院には併設の訪問看護ステーションはなく、訪問看護をしたくて近隣の訪問看護ステーションへ転職しました。2年が過ぎたところで、母の介護のために鹿児島市から地元の屋久島に戻ることになりました。
屋久島に訪問看護ステーションはありませんでした。そこで役場と相談して自身で起業することにし、訪問看護を始めました。起業するときは、まず一歩踏み出すことが大事だと感じています。訪問看護は今までの経験を生かすことができる場です。自分の提供するケアで利用者に喜んでいただけると心が震えるくらい嬉しいです。その人に合わせた生活上の配慮ができる訪問看護が、自分の性格にもあっていたようです。気持ちがあれば十分に活躍できる職場です。
■岩切さんの1日のスケジュール
看多機は、1つの事業所で4つのサービス(「訪問看護」「訪問介護」「通い」「泊まり」)を提供する介護保険サービスです。
医療機器を使用している方や、認知症、終末期の方など、医療依存度の高い方の「慣れ親しんだ家でいつもの暮らしをしながら過ごしたい」「最期は家で迎えたい」というニーズに応え、利用者と、介護するご家族を支えています。
【制度の詳細はこちらをご覧ください】
他職種と共に利用者・家族を支える場
一般財団法人芙蓉協会
聖隷訪問看護ステーション千本/看護小規模多機能型居宅介護事業所 せいれい緑町 兼務
看護師 松村 舞 さん
出産を機に病院を退職し5年を経たところで、看護学生のころから思い描いていた訪問看護の道に進もうと考え、現在勤務しているステーションで2日間の訪問看護体験をさせてもらいました。実際の訪問看護の様子や職場の雰囲気が良かったことから復職を決めました。
復職した時は子どもが1歳と5歳だったので、仕事と家庭の両立ができるか不安でした。最初は週3日午前中だけのパート勤務からスタートし、徐々に日数や勤務時間を増やしていき、今はフルタイムの常勤職員として働いています。当事業所は看護師が15人程いる大きいステーションであり、難しい症例も多いのですが、新人をフォローアップする体制が整っていて、復職するには良い環境でした。
ステーションに看多機が併設されてからは、看護師1名(パート勤務)が看多機に常駐し、私を含めた他の看護師が、月4・5回、当番制で看多機の業務を行っています。当番の日の午前中は看多機で医療処置が必要な利用者の対応を行い、午後は訪問看護に出かけます。利用者に何か異変があれば基本的に常駐看護師が対応しますが、当番担当に連絡があったら駆けつけます。泊まりの利用者がいるので、当番の際は夜間も呼び出しがあれば対応します。
看多機は、認知症やがん末期の方、バルーンカテーテルや胃ろうの処置が必要な方、医療用麻薬を使っている方など、医療依存度が高い方が多く利用されています。そのような中でも、家庭的な環境づくりを大事にしているので、利用者は思い思いに談笑したり、個室で休まれたりと自由に過ごされています。利用定員が限られている小規模のサービスならではだと思います。
また、当事業所は、事業所内での看取りが多いのが特徴です。自宅で看取る予定だったけれど介護者の方も高齢だったり、不安が大きいケースでは、ご家族も一緒に看多機に来てもらいお看取りすることもあります。このように、訪問看護と訪問介護だけでなく通い(デイサービス)と泊まり(ショートステイ)を一体的に提供しているので、利用者・ご家族と顔の見える関係ができており、安心してご利用いただいています。
当事業所には看護職の他に介護職、リハビリ職もいるので、一丸となって利用者や家族支援ができていると実感できます。看護師が1人で頑張るのではなく多職種でアプローチするので、今まで病院勤務の経験しかないけれど在宅領域に興味があるという方にとっても、看多機は働きやすい職場ではないでしょうか。
看護の力で在宅療養を支える
有限会社ホットケアセンター 複合型小規模多機能ほっとの家
管理者 佐々木 広美 さん
病院で働いていた時、第2子を出産しましたが、家事育児と仕事との両立が難しくなり退職しました。子育てしながら自分のペースで働き続けられる仕事を求めてたどり着いたのが、訪問看護でした。訪問看護ステーションに勤務し10年近く経った頃、ステーションに看多機が併設されました。はじめは、ステーションと看多機の兼務でしたが、組織の方針変更でそれぞれ専属の看護師を置くことになったため、今では看多機事業所のほうで働いています。
管理業務を任されるようになり、日々の看護業務だけではなく、新規利用者の受け入れや短期入所の調整、その月の通い・泊まり・訪問等の計画作成とサービス変更の調整、退院前カンファレンスへの参加、看護師の勤務表の作成、人材育成等やることはたくさんありますが、看多機の魅力は数えきれないほどあり、やりがいを感じています。
訪問看護との違いとして、看多機は利用者の体調や状況に合わせて「訪問看護」「訪問介護」「通い」「泊まり」の4つのサービスを柔軟に組み合わせてケアを提供できるということがあります。
気管切開して病院から退院された糖尿病の利用者のケースでは、サービスを2年くらい続ける中で、急変(低血糖、痰の閉塞等)も多く、夜中・早朝に呼ばれ、医師と連絡を取りながら状態が落ち着くまで長時間付き添うことがありました。利用者の娘さんが1人で介護していましたが、病院に入院していてもおかしくない状況の中で、「看護」が在宅療養をよく支えたと思います。最期は治療が必要となり入院されましたが「退院してほっとの家に行きたい」と言われたことは今でも心に残っています。
当事業所に就職する看護師は、ほぼ病院からの転職者です。入職したら指導者がつき、まずは看多機の施設内で「通い」の対応からスタートし、利用者の顔と名前を覚え、関係づくりをします。その後、顔がわかる関係ができてきたら、その方の訪問看護に行ってもらっています。看多機での看護を学ぶための研修を事業所内で実施している他、本人の希望があれば外部研修にも出ることができます。
また、当事業所では、興味がある方には就業前に、何日間か「お試し」の就業体験をしてもらいます。もし、お近くに看多機事業所がありましたら、どういうことをしているのか、実際に自分の目で見て、魅力を感じてみてはいかがでしょうか。