既存の産業がカバーしておらずニーズはあるのにサービスのない、いわば隙間となっている分野で地歩を築くことを「ニッチ産業」と呼びます。看護の分野でも現役で勤務していた際に「あったらいいな」と思うサービスを、退職後に自ら実践する看護職が出てきました。例えば、デイサービスの一環として利用者を銭湯に連れて行くサービスや、新生児集中治療室(NICU)の元看護師長が病児預かりをするなどの取り組みがすでに始まり、利用者の好評を得ています。肌で感じた経験を元に、柔軟な発想で新しいサービスのあり方を提案するニッチサービスは、シニア世代の看護職の新たな可能性を示しています。
働く女性の増加にともない、さまざまな子育て支援事業が増えてきました。例えば、保育ママは、市町村の認定を受けた人が、仕事や疾病等で保育ができない保護者に代わって自宅で少人数の子どもを保育する事業です。認定の要件は市町村によって異なりますが、看護または保育士の資格を必要とするところが多いようです。また、ファミリー・サポート・センターは、地域内で援助を受けたい人と行いたい人が会員となり、育児や介護について助け合う会員組織で、資格は必要ありません。健康に関する専門知識を持つ定年後の看護職はきっと頼れる存在になることでしょう。
インフォームドコンセントを進め、患者の自己選択・自己決定のサポートをすることは看護職の重要な役割のひとつです。豊富な看護経験や生活体験に基づいたアドバイスは患者の意志決定の一助となります。また、患者を支える家族にとっても相談できる、側にいて話を聞いてくれる看護職がいることは力強いサポートになります。あわただしく看護業務に追われている現職の看護職よりも、一線を退いたベテランナースの方が落ち着いて相談できるといった利点もあり、病院の病棟・外来、施設、在宅を問わずこうした役割を担える看護職は近年ますます求められています。
看護職の専門性を生かしたボランティア活動にはさまざまなものがあります。例えば、病院の案内ボランティアは、患者にやさしく声をかけることで安心感やきめ細やかなサービスを提供しています。他にも、学校や企業での講習会講師や地域での健康相談、高齢者等の外出援助など、内容は実に多様です。ボランティア活動に参加するには、病院や施設の募集に直接応募する、ボランティア団体に入るなどが一般的ですが、近年では各都道府県の看護協会で看護職のボランティア登録を組織立てているところもあり、各県協会で実施されている「まちの保健室」でもボランティアを募っています。看護職は病院や地域社会を活性化する頼もしい存在として注目を浴びているのです。