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高まるベテラン・ナースへの期待
現場の声
長年にわたり臨床経験を積んできた看護師は、緊急時にも動じない、心強い存在です。

池田利英子さん

特別養護老人ホームみずべの苑 保健看護部門サブリーダー・看護師

この施設で働くようになったのは、子育てのために一度退職し、その後訪問看護を経てからです。この特別養護老人ホームで暮らす利用者の8割は痴呆症状のある高齢者です。ご本人が自分の意思を伝えようとするのは困難ですから、私たちスタッフの方から相手の心の奥を見ようと心がけ、「この人は何を訴えようとしているのだろう」と感じ取ろうとすることが必要で、それは今まで体験しえなかった看護面での新しい魅力だと感じています。こうした利用者の方たちとの関わり合いを通して、こちらも一緒に磨かれているのだなとつくづく思うのです。その一方で、人の心を読み取るというのは難しいものがあります。そうした面では、子育てや訪問看護を通してさまざまな患者さんやその家族の方と接してきたことが、相手の気持ちを察するのにとても役立っていると思います。

介護では利用者ご本人とのコミュニケーションも大事ですが、ご家族との接し方にも気を配る必要があります。ちょっとした言葉の行き違いから、スタッフあるいは家族の思いがときには一方通行になることもあります。利用者やご家族にしてみれば、20代のワーカーたちは孫のように見え、なにか相談をしたいときは熟年のスタッフの方が声をかけやすい場合もあると思います。施設は生活の場であり、20代から熟年層、高齢者まであらゆる年代層がいることで、よりファミリー的な雰囲気が出るものです。熟年のスタッフは若い人と高齢者の世代間のつなぎ役であり、コミュニケーションを円滑にするための潤滑油にもなっているのです。

私は現在、施設内の医務室で働いています。かつて病院勤務をしていたときは常に医師がいましたが、施設の場合は自分で看護判断をしなければならないことがあります。高齢者の場合、病気の他にも徘徊中に転倒して頭を打ったり、もちを喉につまらせたりといった事故も起きます。病院であれば内科、外科といった専門分野に分かれていますが、施設の場合は医師に連絡するにしても、まず看護師があらゆる事態に対応しなければなりません。こうした面でもやはり、熟年の看護師の方が蓄積された知識、経験を生かして対処することができます。

また、利用者の方の容態が急変することもあります。呼吸困難などの症状が出た場合にワーカーさんや臨床経験の浅い看護師だと、どうしても怖い気持ちが先に立ってしまいがちです。その点、熟年の看護師であればさまざまなケースを見ているので、動じることなく冷静に対応できるのです。施設では突発的な事故や急変といったことが実際にあり、現場でともに働くスタッフにベテランの看護師がいるということは利用者にとってもスタッフにとっても心強いことなのです。

池田利英子さん画像
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