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高まるベテラン・ナースへの期待
現場の声
看護本来の機能を発揮できる施設でのケアに、看護師としての豊かなキャリアを生かして欲しいと思います。
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川崎千鶴子さん

特別養護老人ホームみずべの苑  施設長・看護師・ケアマネージャー

私は「特別養護老人ホームみずべの苑」の副施設長として3年前の開設時に着任し、2年目より施設長として勤務しています。職員の主軸は福祉の専門学校を卒業した介護福祉士(以下、ワーカー)で、年齢は20代の人がほとんどです。特別養護老人ホームで働くということは、日常生活の中のケアということになりますが、若い人たちが多い中で生活の営みに厚みを与えてくれるのがベテラン看護師の存在だと思います。またこのホームではターミナルケアの対応も求められます。このような理由から私は看護師を採用する際に、臨床経験が豊富である、あるいは子育てや訪問看護の経験があることなどを考慮しています。

特別養護老人ホームのような福祉施設は、配置される看護師の数は少なく、ここでも昼間、夜間の担当をどうにか埋めていくといった状況でした。しかし、現場で最後まで看取るケアを行うようになり、看護師の数を増やして現在8名が働いています。勤務形態はさまざまで常勤が3名、昼間だけ、夜間だけなど非常勤が5名ですが、年齢は若年層、熟年層が半々といったところです。施設に就職を希望する看護師には、子育てなどで一時現場を退いたが再び仕事に戻ろうという人が結構います。なぜかというと、病院勤務の場合はシフト制で夜勤もありかなりハードですが、施設の場合は昼間だけの勤務、しかも労働時間が短い、あるいは夜勤のみなどライフスタイルに合わせて働くことが可能だからです。

スタッフに熟練の看護師がいることで特に助かるのは、ターミナルケアを行っている現場でワーカーたちのバックアップができる点だと思います。利用者の表情の変化や排便の違いなど「観察」を通して、ご本人の最期が近くなっていることが看護師にはわかります。ところがターミナルケアの経験がないと、スタッフは「自分がもっとほかにしなければいけないのではないか、何か見落としていることがあるのではないか」と動揺してしまうのです。看護師、とくに在宅の経験者は、人が最期を迎えるまでの変化を予測することができるので、状況を見て「今は声かけだけでいい」といった適切な対応ができ、ワーカーたちにアドバイスしてくれます。けれども、看護師がワーカーを指導するということではありません。介護と看護の一体化をめざし、あくまでも同じスタッフとして、看護師はワーカーをフォローする立場にあるのです。

仕事への復帰を考えているナースの方には、長年のキャリアをぜひ生かしてほしいと思います。とくに施設で働く場合は、利用者ご本人とじっくり関わることができ、看護の原点に戻ることができます。ここでは必要以上に医療処置は行いません。したがって、医療器具や看護用具はほとんど使わず、看護師の持っている感覚、感性、生の手を使ってケアをします。むしろ、看護本来の機能を発揮できることができ、それが施設で働くことのやりがいにもつながっているのです。

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